モモンガくらぶ

自然児を育てる「モモンガくらぶ」 鉱山録vol.23より

 2006年4月のある日、モモンガくらぶのTさんから突然電話がかかってきた。苫小牧にある釣具店からだった。その後、余市町の我が家にTさんと事務局のYさんが訪ねてきた。
 いろいろ話を聞き、依頼された内容に納得して鉱山で水生昆虫の話をすることに同意した。この年は、大人を対象に水生昆虫の基礎的な話をし、採集も行った。きれいな清流幌別川での採集はとても楽しかった。
 2007年7月、今度は、子供たちだけの水生昆虫教室をすることになった。私の話を始める前に、スタッフがカゲロウ、カワゲラ、トビケラになって、先ず導入の役割をしてくれた。私が感動したのは、スタッフがただ話をするのではなく、それぞれ手作りの「ぬいぐるみ」などを身につけて、実際の水生昆虫の動きをし、虫になりきって特徴を話してくれたことである。
 この日採集した水生昆虫の中にどうしても水に入ろうとしない「キカワゲラ」の幼虫がいた。「羽化する!」と直感したので皆にキカワゲラの羽化シーンを観察してもらうことにした。
 水中に入りたがらないキカワゲラのそばに、木の枝を置くと、すぐにその枝に登り動かなくなった。
 やがて、背中(胸部背面)が縦に割れて、頭が出てきた。羽化が完了して出てきた成虫の4枚の翅はしわくちゃの状態だった。
 翅がのびて、背中にたたまれ、部屋の天井の壁に飛んで行くまで、約1時間かかった。子どもたちの、眼はいきいきと輝いていた。このような場面は、自然観察を長くしていても、めったに見ることはできない。
 鉱山での食事は、楽しい。男性スタッフが作ったオリジナル料理やそれにまつわる解説と苦労話。お母さんたちが作った素晴らしい手料理とそのボリュウム。どれをとっても思い出に残る素晴らしいものだ。
 「鉱山」での子供たちの、イベントは冬も行われているそうだ。四季折々の自然と親しむいろいろなイベントが、子供たちを「自然児」として育むばかりではなく、大人になって、自然を大切にする人材の育成にもなっている。
鉱山へくる子供たちが、自然の中で、父や母の愛情知り、兄弟同士の思いやりを感じているだろうなという感想を持っている。

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宮下力(宮下力水生昆虫研究所)

1940年生。幼期より川づりを楽しむアングラー(フライフィッシャー)であると同時に、日本で有数の水生昆虫の専門家である。飼育、撮影、分類などその活動は多岐に渡る。「アングラーのための水生昆虫フィールド・ノート」、「鱒たちのメニュー 」等、多数の著作がある。

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